『ハルの肴』の“塩ダレシラス丼”を再現!

 去年のクリスマス・イブは、実は仕事でちょっともやもやする事があってあまり愉快な気分ではなかったのですが、街中にサンタ服を着て楽器を片手に掲げているカー○ルサンダース人形を見かけた途端、ふっと力が抜けて笑う事が出来ました。
 結局、その日夕食はお鍋に決めていたのでチキンは買わなかったのですが、おかげでカーネル○ンダース人形(とアイディア元である店員さん)にはちょっと恩を感じている為、近々その店舗へ買いに行ってみようかな~と考えている今日この頃です。

 どうも、コンビニのチキンを買ってみようか精算前にいつも迷うものの、フライヤーの油の匂いをかいだだけでお腹がいっぱいになってやめてしまう軟弱な管理人・あんこです。


 本日再現する漫画料理は、『ハルの肴』にてハルちゃんの兄弟子・一朗さんがママ友会のお客さん達に出した“塩ダレシラス丼”です!
塩ダレシラス丼図
 『ハルの肴』とは、画家を目指して上京したものの、グラフィック系の寮つき専門学校が一年足らずで閉鎖して路頭に迷っていたもじゃもじゃ頭がトレードマークの主人公・春野ハルちゃんが、ひょんなことで老舗居酒屋<大門>の主・康造さんに拾われて住み込みで働く事になり、徐々に料理人としての才能を開花していくという、下町人情派料理漫画です。
 ハルちゃんは目立つ金髪の持ち主ですので当初は派手な印象を抱かれがちですが(←何でも、専門学校時代の友達が「染めた方が合うよ!」とわざわざ染めてくれた思い出の髪色との事)、その内面はちょっぴり内気で素朴なごく普通の心優しい女の子な為、近所の理髪店の店主から「キャンディキャンディみたいな…」と乙女チックなイメージを持たれたのも無理ないな~と感じました;(←性格的にはキャンディとパティを足して二で割った感じですが、金色のくせっ毛といい、生まれてから現在まで続いている逆境といい、確かに現代のキャンディといえなくもない気がします)。
 故郷の北海道寿都町にいた頃は漁師である祖父の為に料理をよく作っていたそうですが、プロの料理人としての経験も夢を持った事も皆無で、最初の内は画家の夢を諦めずにいたハルちゃんですが、康造さんの作る料理によって大事な友達が背中を押されて新たな道を選んだ瞬間を目の当たりにし、「喜・怒・哀・楽…私っちは元々人の心バ動かすような絵バ描けるようになりたくて、上京して来たんだ…したけど、料理で人の心バ動かせたら」と考え直すようになっていく過程が、ゆっくりと自然に描かれており、和まされます。
 舞台が東京下町の古くは江戸時代から連綿と続いている居酒屋というだけあり、出てくるのは和食系の料理がほとんどなのですが、食材はごくありふれた物でも多種多様な調理技術が登場してくるせいか見ていて飽きず、逆に「昔の人はこんなにも多くの料理法を生み出していたのか~!」と感心させられる事しきりです。
キャンディキャンディの主人公のようだと理髪店の店主から言われた春野ハルちゃん
 飄々として捉えどころがないけれども料理の腕はピカイチの康造さん、そんな康造さんと<大門>をやんわりかつしっかりと支える女将・旭恵さん、酸いも甘いも噛み分けている粋な大女将・宇佐子さん、相当に頑固なものの料理に対しては真っ直ぐな職人肌の板長・塚内一朗さん、クールな現代っ子アルバイト・愛弥さんら従業員達と、お店の常連さん達は皆家族のように仲良しなのですが、常連客の多い店にありがちな「一見さんには素っ気ない」「よくするのは、馴染みになってから」という独特の空気はなく(←気持ちは分からなくもないんですが;)、一歩店内へ入ったらスッと輪の中に入れる、まるで陽だまりのような温かい雰囲気が読んでいるだけで伝わってきて、こんな居酒屋が近所にあったらな~と憧れます。
 ハルちゃんのお手製お通しがいい出来栄えだった時、ハルちゃん同様北海道出身の女将さんから伝播されて使うようになった「ビューだね!」(←北海道の一地域の方言で、「とても」「最高」「素敵」との意味合い)という誉め言葉が常連さん達から飛び出すのも微笑ましく、こういう内輪ノリだったら大歓迎だと思いました。

 人情系漫画は、さじ加減を間違えると説教臭くなりすぎる&現実味がない助言なのにうまくいって違和感を感じてしまう作品もあったりしてバランスが難しいジャンルでもあるのですが、『ハルの肴』はうまくいく時もあれば、ほろ苦くも伝わる物は確かにあったというエピソードも数多い為、ストンと素直に胸に収める事が出来る稀有な作品です。
 不本意な出来事が続いて起きても、ヤケにならず不貞腐れず、迷いつつも地道に料理の道を手探りで進んでいく様子はこちらまで勇気づけられますので、いろんな方にお勧めしたいです。
北海道で一時期流行ったという「ビューだね!」という言葉が大門でプチ流行中です料理で心を伝える事に感動したハルちゃんは、少しためらいつつも料理の道を歩みます
 今回ご紹介するのは、女将の旭恵さんの年が離れた友達・さやかさんが<大門>でママ友会を開いた時、一朗さんが出したランチセットメニューの一つ・“塩ダレシラス丼”です。
 その昔、旭恵さんが東京へ嫁いだばかりで近辺に誰も友人がいなかった頃、最初に知り合ってお店へちょくちょく遊びに来てくれるようになったのが当時まだ小学生くらいだったさやかさんだったそうで、「お姉ちゃん」と呼んで懐いてくれた小さな女の子が今は結婚して子供を生み、ママ友を連れて<大門>でランチ会を開きたいと申し入れてきたのに感無量になって喜び、一朗さんに子どもたちの分までランチを作ってもらえないかお願いして、一朗さんは快く了解します。
 その際に新しく考えたのがこの丼ですが、作り方は簡単で、藻塩・ブラックペッパー・ごま油・二番出汁・片栗粉を火にかけて用意した特製塩ダレを、シラス、ネギ、水菜をご飯の上へたっぷり乗せた丼にとろ~っとかけたら出来上がりです。
 単行本にあるレシピ欄の説明によりますと(←『ハルの肴』のレシピは、高木雄一さんというプロの料理長が作成していますので、本格的かつ分量も正確な物が多いです)、ポイントは塩気がまろやかでミネラル分の豊富な藻塩を使う事と、香りが劣る分味は勝っている二番出汁をベースに使用する事の二つだそうで、特に塩は料理の完成度を左右する重要な要素なので、是非藻塩を使ってくださいと書かれていました。
 作中でさやかさん達が言っていた通り、シラス丼が醤油じゃなくて塩ダレなのはかなり意表を突かれる感じで驚いたのですが、醤油をかけると味の淡泊な食材はみんな醤油一色に染まって繊細な味の違いが分かりづらくなってしまいやすい為、いいところに目を付けたな~と初見時は興味深く感じたのを覚えています。 
幼い日に嫁いだばかりのおかみさんを「お姉ちゃん」と呼んで慕った子が、ママ友会を大門で開きます
 ゴマ油やブラックペッパーをシラスに合わせると一体どんな感じになるのかが知りたくて、再現する事にしました。
 一巻には詳しいコツと共にレシピが記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!


 という事で、レッツ再現調理!
 まずは、特製塩ダレ作り。一番出汁をとった後に残った昆布と鰹節の出汁がらを水と共にもう一度鍋へ移して火にかけ、沸騰してきたら新しい鰹鰤を追加して弱火にし、数分煮出してから火を止めます。
 そのまま自然に冷まして綺麗な布巾等で出汁を漉したら、二番出汁は準備完了です。
 この二番出汁が入った小鍋へ、藻塩、荒く砕いたブラックペッパー、ごま油を加えて火にかけ、味見してちょうどいい塩加減になっていたら一旦火を止めて水溶き片栗粉を投入し、再度火にかけてゆるめのとろみをつけます。
 これで、特製塩ダレは出来上がりです。
 ※この塩ダレににんにくを足し、ソテーした豚肉に絡めても美味だそうです。
塩ダレシラス丼1
塩ダレシラス丼2
塩ダレシラス丼3
 その間、シラス(乾燥させたタイプではなく、釜揚げしてしっとり感を保っているタイプ)をザルに開けて一旦熱湯をざっとかけて風味を蘇らせ、長ネギは小口切り、水菜は二~三センチ幅で切っておきます。
 あと、ご飯は炊き立ての方が断然合いますので、この時までに炊いておいた方がいいです。
塩ダレシラス丼4
塩ダレシラス丼5
 炊き立てご飯を盛った丼へ先程のシラスをどっさり乗せてその上に温め直した塩ダレをたっぷり回しかけ、さらに水菜と長ネギを飾りつければ“塩ダレシラス丼”の完成です!
塩ダレシラス丼6
 シラス丼というと、醤油か麺つゆ系のタレがかかった和風のイメージがありますが、この丼からは合わせ出汁の温かな香りだけではなくごま油の香ばしさも湯気にまじって漂ってくる為、少し混乱します;。
 見た目も一見完全に和風っぽく見えますが、よくよく見ると黒胡椒の細かい粒が入っているのですぐに違うとわかり、簡単には味の想像がつきません。
 今までに食べた事がない組み合わせですので、興味津々です。
塩ダレシラス丼7
 それでは、シラスとご飯に出汁餡をからめていざ実食!
 いただきまーすっ!
塩ダレシラス丼8


 さて、味の感想ですが…結構がっつり系で衝撃的美味さ!二番出汁がいい仕事をしててビューです!
 一見さっぱり風の海鮮丼に見えますが、一口食べるとごま油の香ばしいコクがまろやかに効いた塩味が濃厚な味わいへと仕上げており、やや中華寄りの創作和食といった趣。
 塩ベースの中華丼と味付けが似ていますが、こちらは鶏や帆立の強烈な旨味の効いた出汁ではなく、鰹と昆布の穏やかな中にしみじみとした深さがあるあっさりした旨味の出汁を使用している為、より日本人好みな落ち着いた出来栄えなのが特徴的です。
 時折、ブラックペッパーのピリッとくるストレートな辛味が適度にアクセントを付け加えており、おかげでシンプルな味の割には丼全体にメリハリがついていて単調さをまるで感じませんでした。
 舌をトロリと包んだすぐ後にスッとほどけていく、例えるならば癒し系の柔らかなとろみの出汁餡に、しっとりホロリと優しい口当たりのしらすが一つにまとまってご飯と調和するのが心地よかったです。
 あと地味ではありますが、藻塩のミネラル分によって塩辛いだけではないより複雑な塩気が餡をワンランク上の美味しさに仕立て、シラスに含まれる磯の風味をぐっと引き出していたのが印象的に残りました。
 長ネギの爽やかな辛さと、水菜のシャリシャリシャキッとした瑞々しい食感もいい箸休めになると同時に目先を変えますし、言う事なしです。


 塩ダレは最初からシラスと混ぜてしまうより、後からかける方がお勧めです。
 出汁餡をかけたおかげで最後まで熱々のまま頂けますので、冬向けの一品だと思いました。

●出典)『ハルの肴』 原作:末田雄一郎 作画:本庄敬/日本文芸社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。

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・性別:女
・趣味:読書、料理、ゲーム
・一言:食と本をこよなく愛してます。
・特に意欲的に再現中の漫画:
 …『姉のおなかをふくらませるのは僕』
 …『美味しんぼ』
 …『クッキングパパ』
 …『紺田照の合法レシピ』
 …『酒のほそ道』
 …『じったんの時短レシピ』
 …『鉄鍋のジャン!』
 …『なんちゃって駅弁』
 …『華中華』
 …『花のズボラ飯』
 …『まかない君』
 …『ママの味♥魔法のおかわりレシピ』
 …『みをつくし料理帖』
・再現料理を予定中の漫画:
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